【事例①】末期がんの患者様からのご相談

<ご本人の状況>

・56歳男性(Aさん)

・末期のがんで、医師の診断では余命半年程度。

・結婚はしておらず、子どもはなし。

 ごきょうだいがいらっしゃるが、10年以上音信不通。

・がんが骨転移して、痛みで仕事も続けられなくなり、退職。

・介護認定は受けていないが、骨転移の影響で徐々に歩行や日常生活が困難に。

・住居は市営住宅で、駅からも遠く、不便な立地。エレベーターなしの3階。

・財産は預貯金のみで、数百万円程度。

 

<ご本人のご希望・不安・要望など>

①自分が亡くなった後の手続きを安心できる人に任せたい。

②そのためにいくらかかるのか、どれくらいのお金を残しておかなければならないのかが不安。

③きょうだいにはお金は残したくないし、手間や負担もかけたくない。

④今後の生活がどうなるのかが不安。

 

 

《当法人での提案内容・サポートなど》

①②について → 死後事務委任契約の締結

当法人と死後事務委任契約を結び、亡くなった後のご葬儀、火葬、納骨、役所への届出、光熱費や携帯電話などの各種契約の解約、家財道具の処分や家の明け渡しなどについて、当法人で責任をもって行えるようにしました。

また、Aさんはこれらにかかる費用面でも不安を感じていたため、近隣の葬儀社様に一緒に相談に行き、葬儀の内容や費用について具体的に取り決めを行いました。自宅の家財道具等の処分についても、事前に遺品整理業者様に見積りをしてもらい、将来必要になるお金をできる限り明確にしておきました。

これらの作業を細かく行うことで、逆に「それ以外のお金は自由に使って構わないんだ」という意識を持って頂きました。

 

③について → 遺言公正証書の作成・遺言執行者に指定

Aさんには子どもがいないため、将来亡くなった場合は、Aさんのごきょうだいが法律上の相続人になります。

しかし、Aさんはごきょうだいの方と疎遠であり、財産を残したいと思っていませんでした。

そこで、遺言書を作成し、死後に残ったお金は医療関係の団体に全額寄付をすることになりました。

事前に相手方の団体にも連絡を取り、万が一の場合には寄付を受けてもらえるとの承諾も頂きました。

当法人が遺言執行者となることで、責任をもって遺言書の内容に従って寄付の手続きをさせて頂く予定です。

 

④について → 緩和ケア外来への同行、病院との打ち合わせ、転居サポート

Aさんは、ご自身の体が病魔に蝕まれていく中で、今後の自分の生活がどうなってしまうのか

非常に不安を感じていました。

いつまで自宅で生活できるのか?

自宅で受けられるサービスはあるのか?

どの段階で入院すればいいのか?

ご家族のいないAさんは1人でこれらの不安と闘っていました。

当方では、まずは通院先の病院から、近隣で緩和ケア病棟を有する病院を紹介してもらい、事前の緩和ケア外来での相談にも同行しました。

病棟の雰囲気や医師の先生の対応などから、そのうちの1つの病院を希望されたため、そちらで入院予定先として登録してもらい、当方もAさんのサポーターとして看護師やソーシャルワーカーの方と事前協議を行いました。

 

また、今後は車いすでの生活も予想される一方で、従前の住居(立地不便、エレベーターなしの3階)では生活に支障が大きすぎました。

死後の手続等に必要な費用は十分に確保できるめどが立っていたため、残りのお金はご自身の生活が少しでも便利で快適になるように使って頂きたいとの思いから、入院予定先の病院の近くでバリアフリーのマンションを探し、そちらへの転居のサポートを行いました。

 

併せて、Aさんは65歳未満ですが、末期がんの診断を受けていますので、介護保険の申請が可能でした。

区役所で介護認定の申請とともに、緊急調査が必要である旨の申し出を行い、これに基づき、車いすと介護用ベッドなどの福祉用具の手配を行いました。

その後も、週に1回程度の定期的な面談を継続しています。