【事例③】内縁のご夫婦からのご相談

<ご本人の状況>

・83歳男性(Cさん)と、内縁関係の70歳女性(Dさん)

・Cさんは、離婚した元奥様との間にお子様がいるが、数十年来疎遠。

・2人はCさんの持ち家で同居しているが、事情があって入籍はしない。

・Dさんの収入は低額の年金のみなので、生活はCさんの年金と預貯金に頼っている。

・Cさんは、年齢的な衰えから、徐々に物忘れ等も増えてきており、心臓にも持病を抱えている。

 

<ご本人のご希望・不安・要望など>

①Cさんが認知症等になった後のDさんの生活が心配。

②Cさんが亡くなった後の葬儀法要などはDさんにやってもらいたい。

③Cさんが亡くなった後も、Dさんがこのまま家に住み続け、生活に困らないようにしてあげたい。

 

 

《当法人での提案内容・サポートなど》

①について →  任意後見契約の締結

Cさんご自身が認知症などでコミュニケーションがとれなくなると、銀行でのお金の出し入れも難しくなります。

内縁関係とはいえ、CさんとDさんは法律的には赤の他人ですから、Dさんが代わりに窓口に行ってもCさんのお金を引き出すのは難しいでしょう。

そうなると、Dさんご自身の年金だけでは生活が難しくなるかもしれません。

また、Cさんの役所関係の手続きなども、ご家族であれば代わりに行えるかもしれませんが、Dさんが行うのは難しい場合もあります。

それに備えて、事前にDさんと任意後見契約を結ぶことで、将来Cさんが認知症になった場合は、Dさんが後見人になれるような事前準備をさせて頂きました。

Dさんの方がCさんよりも一回り年齢が若く、お元気であることから、Cさんの身の回りのサポートもしつつ、ゆくゆくは後見人としてお金の管理もできるような仕組みづくりを行いました。

 

②について → 死後事務委任契約の締結

CさんとDさんとの間で、死後事務委任契約を結び、亡くなった後のご葬儀、火葬、納骨、役所への届出などについて、Dさんが行うことができるようにしました。

これらの手続きは、ご家族であれば特に問題なくできるものばかりですが、法律上は他人であるDさんが行うのは難しい場合もあります。

また、何の取り決めもないまま、Dさんの判断で行ってしまうと、将来実のお子様との間でトラブルにもなりかねません。そこで、きちんと書面でDさんに依頼をし、その内容も細かく取り決めておくことで、Dさんが手続を行う上での法的な根拠づけと、それがCさんご自身の意思であったということの証明にもなります。

 

③について → 遺言公正証書の作成・遺言執行者に指定

Cさんには、疎遠とはいえ実のお子様がいることから、将来Cさんが亡くなってしまうと相続の権利は全てお子様がもつこととなります。

Dさんには相続権はありませんから、何も準備をしていないと、Cさんの相続財産をもらうことはできないばかりか、Cさん名義の家に住み続けることすらできないかもしれません。

そこで、遺言書を作成し、自宅と預貯金の大部分をDさんに譲ることとし、お子様には遺留分に相当する程度のお金を残すこととしました。

財産全てをDさんに譲るとすることもできますが、お子様には遺留分という権利がありますので、将来Dさんがお金の請求を受けるかもしれません。

その時にご高齢のDさんがそれらの請求に対応するのはストレスもかかることから、最初から、いくらかはお子様に残すという内容にすることで、よけいな争いを生まないことを優先しました。

遺言執行者には当方が就任することで、責任をもって当方からお子様にも連絡をしたうえでお金の引き渡しも行うため、Dさんにはなるべく負担のかからないようにさせて頂く予定です。